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SKY-HI (AAA日高)と いとうせいこう のHIP HOP対談

SKY-HIことAAAの日高光啓さんと、いとうせいこうさんの対談です。2018年6月30日に放送されたテレビ東京の流派-Rの書き起こしです。

 

時代とHIP HOP

 

SKY 日本語で韻を踏むっていう行為を、普通になってると気づかないじゃないですか。

2足歩行で歩いていると二足歩行で歩くのが難しいってことも思い出せないんですけど、最初に「あれ、これ2本でいけんじゃね」っていうのをやったのがせいこうさん達だったりするので、感謝ですかね、どっちかって言うと。

おかげさまで僕達は素敵な歌唱法を手に入れることができましたっていう。

 

いとう それはすごい嬉しい。

僕は基本的にみんなとはちょっとだけ違った位置関係でヒップホップを捉えてたって事があって。

ポストモダンがずっとありましたよね時代的に。

モダン、近代がありまして、ポストモダンってのは近代であらゆること、手法は出尽くしちゃったんだと。

だからそれをポストモダンと呼んで遊ぶ、もう戯れしかないと。

もう革命は本当に起きないんだと。

革命であるかのようなことをやるしかないんだっていう風に思っていた時にあの音楽が出てきたんですよ。

そしたら確かにあらゆる過去の音楽をごった煮に混ぜて、新しいものは何一つないんだけど、それを重ね合わせることでなんだかワクワクするものができるじゃないか、これってポストモダン馬鹿にできたものじゃないじゃんってゆうふうに僕は思ったの。

これって現代音楽だよねって。だって引用しかないんだもん。

全員が踊って笑いながら現代音楽を、しかもストリートでやってるって、いったいこれ何だっていうのが僕の強烈なヒップホップからのつかみですよ。

これは今までの音楽と違う、音楽がモダンだとしたらこれはポストモダンなんだってゆう。

だったら俺はこっちの方をやる。

一切音楽を勉強する必要がない、必要がないとこがかっこいいって思ったんですよね。

 

SKY 手法的なのに惹かれたってことですか。じゃあテーマ性とかは後から?

 

いとう 後からだね。

何言ってんのかわかんなかったもん最初。

ものすごい訛ってるし、ものすごい早口だからあんまわかんないですよ。

それでテロップが出るような番組もその頃ないからね、ラップに関しては。

どうも自分で自慢してるっぽいな、とかいうのは何となく分かるわけですよ。

だけど自分がこの新しいやり方で自分も何かやりたいと思った時に今度初めて何のテーマで語ればいいんだろうって思うじゃないですか。

そういう時に僕の最初の、わりとよくやった東京ブロンクスっていう曲があるんですけど、核戦争後の東京みたいな、やっぱりその時にポストモダンにすごく流行ってた東京のイメージなんだよね。

だからそういう今まであった違うもので得てきた知識みたいなものをこの手法の中に埋め込んでいきながら歌詞を作ることになったんです。

 

いとうせいこうから見たSKY-HI

 

いとう 自分がやってることに、それこそコンシャス、意識的なことをやってるじゃない。

それはでもすごく大変だよね。

 

SKY 大変ではありますね。

 

いとう そんな考えなくてもいいっしょって言う流れって必ず流行るものの中にはあるじゃない。

 

SKY 自分は色んな要因が複合して、見えたものを見えてないふりをして生きれないっていうだけだったような気がしますね。

ステージだったり創作において裸にならざるを得ない状況ってのがいっぱいあって、むき出しで行かないと死ぬしかない、表現者として死ぬしかないという状態がいくつかあって。

それこそバトル出た時とかももそうだったと思うけど昔の。

芸能と音楽とか人と人とかそういうものの軋轢をたくさん経験した結果意識的になれたという流れのような気がします。

 

いとう それはでも同じ条件下に置かれて誰もがその選択をするとは思えない。

 

SKY そうやってなった時にヒップホップに救われたってゆうのがありますね。

ヒップホップだったりラップのメソッドだったり考え方、一言で言えば精神性、マイナスをプラスにしようっていう考え方みたいなものの精神性に救われた結果、吐き出す方法としても自分もそこになったし、ということなきがします。

 

HIP HOPと社会

 

SKY 特にアメリカはチャンスザラッパーが地元の公立中学校に1億円寄付したり、ロジックが自殺率減らしたり、ケンドリックラマーもそうだし、アメリカのヒップホップと社会の関係性はやっぱ昔から、ストリートレペゼンしてた頃から変わんないような気がします。

ポップミュージックってどうしても言葉数もそうだし大衆性を求めた時に弱まる部分であったと思うんですけど、今は辛くても負けるな頑張れって歌ったポップミュージシャンの脇でJay-Zが、俺昔まじでこんな感じだったんだけどこうやって頑張っていったらこうやって成功してったよって歌うことの方が刺さる人ってのは確実にいるはずで、今は一番力持ってることな気がします。

 

いとう 社会っていうこんな漢字の二文字をね、例えばポップスではなかなか歌えないですよね。

社会じゃなくてじゃあ営みとか君と僕とか誰かと誰かって言えば分かるというふうになるじゃないですか。

そうすると社会っていう熟語自体が使いにくいものとして、上の偉い人達が使う言葉だと、そういう感じでしょ。

 

SKY そうそうそう、それがすごく嫌なんですよ。

 

いとう 僕がヒップホップ聞いてすごいなと思ったのは、今まで自分たちが何かを世の中に訴えたい時に、偉い人たちだけが使う言葉、平面の俺たちが使う言葉、じゃなく全部一緒でいいんだっていう。

社会のことを俺一つ歌いたいんだけどっていうと、じゃあ韻さえ踏んでればいいのかいみたいな感じでいえば別に社会って言葉も入るわけじゃない?

これはもう革命的なことだったんだと思うんですよ。

この社会っていう難しい言葉を支配している人たちがなるべくやっぱり平民はこの言葉とか喋らない方がいいなと思ってやっぱり難しくしてたんではないかって思うんです。

ところが金子兜太っていう90何歳まで社会派俳句っていう現代俳句のトップだったじいちゃんいるんですよ。

昔からちょっと対談したりしてたんだけど、どうしてもやっぱりもう1回話聞きたいってことになって一昨年だったっけな、話をして、ヒップホップっていうものがあって、自分たちが手で触れない難しい言葉と、自分が社会生活上ある言葉と離れているっていうことを言ったんだけど、今回改めてもう一回その話をしたら‥だって俳句の中では詠えないでしょって。社会とか。

でも違うと金子兜太は。全部詠えると。

あらゆる日本語は、詩の言葉って書いて詩語であると。

そんな歌えないなんて言うことを考えちゃダメだと。

詠うんだって言われてドカーンときちゃったんだよね。

じゃあ俳句ってヒップホップじゃんって思うし、何だこれって。

 

SKY それはねすごい分かりました。

手法で言えば何でも歌えたはずなのに、どっちかって言うと僕の目には大衆的な j-pop の方が非常に政治的で社会的で宗教的に見える。

こういう風にしこういう風にしないといけないとか、こういうものが受け入れられるとか、こうあるべきだとかいうラブソングの方が、政治的だし宗教的だしそれがより大衆に広まる状況って、ちょうど僕じゃない Twitter でなんか知らない人が「日本は普通教っていうのが浸透してて、このカルト宗教がやばいみたいな。みんなと一緒でなくてはいけないみたいな。だから無宗教ではなくて普通教っていうカルト宗教を信仰している。」みたいな話でちょっとフッてきたんですけど、たぶんだからそうなんですね。

それは壊したいなとたぶん思っているんだと思います。

だから現在も進行形でそれこそ今月出るシングル(Driver's High)とかってポップソングもしっかり作ったし、名のあるガンダム、大きなもののタイアップをいただいて、しっかり書かせてもらって、それはちゃんと受け入れられるものを書いたと思うんですよ。

俺はね背中向けたくないですね。大衆性とか今の日本に対するさっき言った普通教だったりとかに対してもなんかこう背中向けたりとか‥

 

いとう その人達にも話しかけたいんだよね。

 

SKY そこをちゃんとなんかこうコリをほぐして、それでちゃんとやりたいですね。

 

日本のHIP HOPの未来 

 

いとう 僕はね、今すごく AI が発達してるでしょ。

だからすごく簡単にスマホとかで英語とか中国語喋ってもらったらわかるでしょ。

単純に言って大まかなことは出るっていう社会にみんながなってくれるといいなと思ってるんですよ。

そこはいま自分がたとえば新曲を書いたとして、それを韓国の人にわかってほしいし、イラクの人にもわかってほしいし、アメリカ人にもアメリカの黒人たちにもわかってほしいしっていう風に思う。

でその時に英語を使うのはできないし、英語を使うんじゃなく日本語を使ってる、つまり僕はラップ共和国みたいに見えてるわけ世界が。

だからヨルダンの子が歌ってることも大体は分かる。そうなるんだよすぐ。

誰かがそこでフリースタイルやってても(スマホとかを)こうやったらもうわかる。

このことによって自分たちの俺たちヒップホップが好きな人間同士の何かが分かりあえるようになってほしいし、なるんじゃないか。、しなきゃなんない。

それが僕のヒップホップの一番大きな壁だったものが簡単に技術で取り払われるんじゃないかっていう、そういう夢みたいなことを考えてますね。

 

SKY 言語の壁っていうのがそういう形の崩れ方をしてるし、実際には、まあヒップホップとは別として韓国の人とかが世界一位獲ったりするじゃないですか。

ビルボード一位も獲るし、ワールドチャート一位獲るし、韓国語の歌で。

キースエイプ、KOHがやってたやつとかがワールドヒットになったりとか、アジア人が世界で活躍している例がどんどん増えているから、若い子にはそういうチャンスでどんどん日本人も増えると思うし、やっぱちょっと悔しいですし、アジアブームじゃないですか、言ったら。

結構しかも長いことエイジアントラップ以降もエイジアンブームってのが来てて、日本人のスターだけ出ないのは悔しいから、それは日本語のままでいいから頑張って欲しいし、きっとその時にラップとかヒップホップの状況というのは、もしも日本が恵まれて無ければ無いほどその状況を歌にした強い歌ができるし、もしも恵まれてて、日本だったりそこで育ったラッパーの状況、もし恵まれてたら、ラッパーは副業でもほんとにいいと思うし。

恵まれて仕事ができて、ラップも楽しくてやってるぜって言う、その娯楽の一個としてのラップも発達するし。

ヤバい日本最大の危機だ、俺の生活もやばい、明日がやばい、おふくろもおやじも食えない。どうしようってやつが作った歌の強さはさらに世界中に届いて、一発逆転のチャンスになるからどっちに転んでも夢しかないなっていうのは最近思います。

 

いとう うん、そうだ素晴らしい。だからとにかくかっこいいものを作ればいいんですよ。

 

SKY そうそうそう。だから意外と今の日本見落とされがちだけど技術もう一回大事な気はしてます。

だからやっぱ上手い子多いし今は若い子とか本当に。

なんかこうもっと研鑽が起こって、ヤバいラップ沢山出てきそうだからそれも含めての希望はありますね。

 

いとう トラックメーカーもいっぱいかっこいいの作るじゃんか。

 

SKY そうですね。夢がいっぱい、夢がもりもりですね(笑)

 

いとう 夢がもりもり(笑) だから一つだけだよ、「俺は世界向いてんだ」って気持ちになってないからだと思う。

世界の人たちに分かってほしいんだ、だから日本語で歌ってんだって思えばいい。その気持ちが伝わらないでこう(内に閉ざすように)なっちゃう。

そうすると内閉的なことを歌い、自分たちが一番だってことを歌って自分たちだけで消費して、世界の人たちから見ると、えっ何言ってんのそんなん遅れてんじゃんて言われることになっちゃうよ。

 

SKY 気持ちの開国ですね。精神的鎖国を開国するっていう。